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うらぎり

裏切り

坂口 安吾

「新潮 第五一巻第九号」1954(昭和29)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,343 字 · 70 页

青空文庫

思われないからです。

いわばセラダに対する友情だけはわりあい純粋なものではなかったかと思われます。

むろんその余徳としてセラダがジャンジャンおごってくれるような望外なこともありまして、彼はてれてニヤニヤするほど満悦の様子ではありましたが、それは友情の結果であって、出発ではなかったようです。

だいたいセラダは気に入った女の子には大サービスしますが、縁もユカリもない野郎なぞには決してサービスしないタチでした。彼は野郎どもに対しては特に警戒心が深かったのです。二世にすらも親友がいないと云われているほどですから、血は同じでも国籍のちがう日本人にはネゴシエーションの席以外には友情をもつ必要を感じていなかったのです。その態度は露骨でした。彼は法本と遊びにきてもワリカンで、他人の分を払ったことはありません。

そういうわけで、日野が彼に友情を示しはじめた当座のうちは、セラダは警戒厳重をきわめていました。ビフテキと女をまきあげられた野郎めがなんのために友情を示すのか、場合によってはピストルが必需品かも知れないと気をまわすぐらい用心して、彼は日野が近づくたびに露骨にキゲンを悪くしてみせました。