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うらぎり
裏切り
「新潮 第五一巻第九号」1954(昭和29)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,343 字 · 70 页
しかし法本も金につまっていたのです。一年の大晦日もせまってきましたし、多少の危険はあるにしても、ノンビリしてはいられません。しらべてみると、セラダは週末ごとに小夜子サンと熱海へ行っているのです。
法本一行は土曜日に熱海へ行って泊りました。そこからはセラダの動静を見ることができます。
セラダにとっては運がわるかったのです。その日曜に熱海の旅館で小夜子サンが病気になったのです。いつもなら宿でも道でも二人そろっていないことはなかったのですが、小夜子サンが病気とあっては仕方がありません。セラダが自動車で病人用の買い物にでかけたのです。
悪いことには夕方でした。
買い物の途中、セラダを呼びとめたのは法本です。腹心も一人いました。彼らは久闊を叙し、一しょにセラダの車にのりました。セラダの宿へ行くためにです。セラダは彼らを疑っていませんでした。彼らが半分半分の分け前をとりにくるのは当然で、どうしてとりにこないのかとフシギがっていたほどですから。
しかしセラダの車は宿へ行かずに来の宮から十国峠の方へ登って行きました。その車からやや離れてもう一台の自動車が走っているのは、それが法本一味の自動車です。