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らしんのにょせん
裸身の女仙
野村 胡堂
「朝日」1932(昭和7)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,437 字 · 29 页
鞍馬とお鳥は、それでも、いくらかずつ落付きを取返して、やがて、平静な心持で話し会うようになると、何より先に、お鳥の豊満な裸体、月の光にさらされて、ほんのり霞むような美しい身体が気になります。
「気持が悪くなかったら――」
萩江は振り分けの中から、着換の単衣を出して、そっと、その肩へ掛けてやりました。
「…………」黙って俯向くお鳥の目には、もう涙さえ浮んで居ります。
「お鳥殿、いつぞやは、申上げる程のことも申上げなかった。――狼は急に飛び付きもすまい、此処でお話いたそうか」
「どうぞ、萩江様」お鳥は鞍馬へ差し寄るように、委ね切った心持で、見上げました。
「五年前――、祿を離れて、軽井沢の猟師、三五郎と言う者の家に厄介になって居る時、フトした事から、あの絵姿を見付けたのが始まり、恥かしい事だが、何うしても忘れられなかった――」
萩江は斯う言う調子で語り進みました。猟師三五郎に聞くとそれは百年も前から家に伝わったもので、スペイン国のムリロと言う名人の描いたもの、ポルトガルの船乗りが、難破して清水港に着いた時持って来たのだということです。
ポルトガルの船乗りは間もなく死んでしまいました。