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せいこのしじん
西湖の屍人
海野 十三
「新青年」博文館、1932(昭和7)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,487 字 · 39 页
しかし大竹女史は、喜びの表情をあらわして、答えた。
「わかった。なるほど曽我と神田か」と云ったが、そのあとで急に顔を顰めて、「わしは胸が苦しくてならん」と云った。
「それは先生」曽我貞一と名乗る男は一寸云い淀んだが、「先生は御臨終の苦しみを続けていらっしゃるのです。目をお醒ましなさい」
「なに臨終だァ? 莫迦をいいなさい生きているものを掴えて、臨終とは何ごとかッ」大竹女史は、男のような険しい顔付をして叫んだ。
「先生は、もう疾くの昔に死の世界にゆかれました。もう三年も前に亡くなられたのです」
「わしが死んだ? 死んだものが、お前の顔を見たり、こうやってベラベラ喋られるかい。ハッハッハッ」女史は、目を瞑じたまま後へ反りかえって笑った。隣の老人が駭いて、女史の身体を後から支えたほどだった。
「いえ先生は既に亡くなられました。今日はそれをお教えして、死後の御立命をおすすめに来たのです。先生には死んだような気がなさいませんか」
「そういわれると、どうも、腑におちないこともあるんだが……」女史は、首をすこし曲げて、何事かを考えている風だった。
「宗先生、試みに、御自分の体を触ってごらんなさい」