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せいこのしじん

西湖の屍人

海野 十三

「新青年」博文館、1932(昭和7)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,487 字 · 39 页

青空文庫

彼女の言葉によると、その痔疾は、かなりひどくなっているそうである。

それだけならば、漢青年は、我慢をしているつもりだった。ところが彼は問題を惹起さずにいられないことになったというのは、幾度もマリ子に、痔の清掃を命じているうちに、いままでのあらゆる彼の暴令に、唯の一度も厭な顔を見せたことのない彼女が、この痔疾の清掃には極度に眉を顰めていることに気がついたからであった。

漢青年は遂に決心をして、家扶の孫火庭を呼んで、痔疾の治療をしたいと云った。

孫は非常に困ったような顔をしたが、

「何分ここは片田舎のことでございますから、杭州へ出まして医師を見つけて来ます間三日間お待ち下さいまし」

と云った。

「何を措いても、早くせい!」

漢青年は家扶を激励したのだった。

それから三日目のことだった。

孫はニコニコして部屋に入ってくると、痔の医師を連れてきたことを報告したのち、

「この医師は、口が利けず、耳も聞こえませんから、何もお話しなさってはなりませぬぞ」

と、厳かな顔付をして附加えた。

そこへ王妖順が、一人の不思議な男を案内してきた。色の褪せた古い型の長衣を着ていて、いつも口をモグモグさせては、ときどきチュッと音をさせて、真黒い唾を嘔いた。