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「みること」のいみ
「見ること」の意味
中井 正一
「国民芸術」1937(昭和12)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,534 字 · 8 页
画布は決して二次限の平面ではなくて、発条のようなはたらきである。
しかしこんな芸術気分には現今においては人々は実にふれにくいのである。なぜなら、商人が算盤を忘れて「見る世界」に入るどころか、画家が算盤を抱いて絵を描いているのである、いや描かずにいられないのである。
「見る存在」それ自体が商品化されている。そして大衆の見るはたらきは利潤対象として数量化されている。大衆は利潤対象としての大衆として、訓練され、ようやくものになりつつある。デパートと映画と新聞と蓄音機のタイアップと、権力者の参加で、とんでもないものになりつつある。
大衆の見る作用が、すでに売りものに、売りものどころかもっと大きな機構の犠牲になってひきゆがめられている証拠を私たちはいたるところに見せつけられるのである。誰一人真にその中で楽しんでいるのではなくして、人々と共に、何かに引きずられているのである。
「見ること」の正しさを守りつづけること、そして大衆を見ることの正しさの中に奪いかえすこと、この戦いが否定を媒介としてみずからを対象化するという、さながらの物になりきるという、「見ること」、そのことの中にある本質にほかならないのでもある。