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おやがすてられるせそう

親が捨てられる世相

坂口 安吾

「週刊朝日 春季増刊号」1952(昭和27)年3月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,326 字 · 15 页

青空文庫

この戦争も、子を育てる親の愛情を破壊しはしなかった。子供は空腹であっても、親の愛情に特に飢えたりヒガまなければならないほどの片手落ちを痛感する理由は少なかったであろう。徹底的にヒガミを植えつけられざるを得なかったのは、子の親のまた親たる老人であった。

彼らは配給量という肉体的で絶対的な階級制度に首の根ッ子に縄をつけて引きずりまわされて、甘やかしようのない深傷をうけた。老いては子に従えというアキラメと忍従の心境は、子供自慢の心境などから発して自発的に生まれ深まるところにそれに耐える力もあるのだが、配給量という甘やかしようのない規定で「お前はゴクツブシである」という抜きさしならぬ審判を押しつけられては、ヒガマざるを得ない。自発的な忍従やアキラメの代りに、親の恩を売り物にし、不信をのろうイヤガラセの心境の黒雲の如くに生じたのはフシギではなかろう。

戦後特に子にすてられる親の問題が多くなったのは民主主義が子に味方して親を棄てやすくしたというよりも、親の方に忍従の心境がうすれてヒガミが多くなり、親子のマサツが多くなったせいだろうと私は思う。

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