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おやがすてられるせそう

親が捨てられる世相

坂口 安吾

「週刊朝日 春季増刊号」1952(昭和27)年3月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,326 字 · 15 页

青空文庫

日々新しく訪れる現実にそのまま順応できる心構えができていたからである。

もっとも、この心構えをそう高く評価するわけにも行くまい。人生には当然もっと積極的な設計があって然るべきで、この両者の価値は比較論争すべきことではないようだ。

しかし、私が面白いと思うのは、この川崎君にしても、老後ということを、ちゃんと考えているということであった。

彼の小説を読むと、彼が非常に中風を怖れ、その予防として毎日長時間の散歩をせッせとやっていることがシバシバでてくる。それは彼の母が中風で倒れて十年もねこみ、糞尿まで人の世話になって家族にイヤがられて生きのびていた哀れな生活を見ているから、そういう風にはなりたくないというのが発心の元のようである。

魚屋の長男に生まれて家業を弟にゆずり、自分は海岸のカマボコ小屋に住んで好きな小説を書いてくらし中風になれば、まア兄のことだからイヤイヤながらも弟夫婦が面倒をみてくれるであろうが、そういうミジメな病床生活をしたくないというような――しかし、どうすればそれを防げるか、それに対処する方法が貯金でもなければ妻帯でもなく、主として毎日の長時間の散歩であるということ。