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きく

親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選

山川 方夫

山川方夫『親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:菊、トンボの死、ロンリー・マン、愛の終り、赤い手帖、暑くない夏、あるドライブ、恐怖の正体、蒐集、ジャンの新盆、博士の目、はやい秋、非情な男、メリイ・クリスマス。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 67,486 字 · 144 页

青空文庫

すると、彼女はこう答えた。

「そうよ。これからデパートに行くの。宏ちゃん、ちゃんとお留守番しててね」

「チェッ。ミキはつれて行くの。ずるいや。……あ、そうだ。じゃ、コルト・オートマのプラモデル買ってきてよ、ね? ママ」

「だめ。ピストルのおもちゃは、パパがいけないっておっしゃったでしょう?」

ニコニコして、彼女は牧田とこんな会話をしているんだ。つまり、そこにあったのは、平凡な、ごくありきたりの、小学校五年の男の子と、その妹といっしょにいる母親の、手を抜いた安っぽいテレビの画面そのままの幸福なシーンなんだ。それは、まったく気が遠くなるほど類型的な、平和な、なんの苦労もない母と子の日常の図柄だった。

ぼくはぼんやりとし、何故か急に目のまえが昏くなった。そのぼくに、やはり満面にごく母性的な笑みをたたえながら、彼女が声をかけた。

「宏の、お友達でいらっしゃるの?」

ぼくは答えられなかった。牧田のやつが、横から口を出した。同級生だと紹介した。

そのときほど、ぼくは自分の年齢を呪ったことはない。ぼくはやっと十になったばかりだというのに、彼女はどう考えても三十歳の近所なんだ。