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きく

親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選

山川 方夫

山川方夫『親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:菊、トンボの死、ロンリー・マン、愛の終り、赤い手帖、暑くない夏、あるドライブ、恐怖の正体、蒐集、ジャンの新盆、博士の目、はやい秋、非情な男、メリイ・クリスマス。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 67,486 字 · 144 页

青空文庫

「守谷とは、同じテニス部の仲間だった。僕より彼のほうが、君とは昔からの知合いだ。……ねえ、あれがはじめてだったのかい?」

「何をいうのよ、失礼ね。怒るわよ、勝手に、へんな想像なんかしちゃって……」

「はじめてだっていうのか、と聞いてるんだ」

不意をつかれ、いかにも感情を装っているのがあきらかな妻の声音とは逆に、夫の声は重く、強くひびいた。

妻は顔がこわばり、緊張に頬がふるえるのがわかった。蒼ざめ、何もいわなかった。

「しらをきっても遅いさ。僕が凝り性なのは君も知ってるだろう。その僕が調べたんだ。ホテルでの変名もいってもいい」やがて、夫はいった。

「……そうか。やはり、もっと前からだったんだな」

「違うわ。……あれが最初」妻は目をつぶった。「信じて。あれ一回きり」

夫は、苦笑でその言葉に答えた。

「……よけい、君が信じられなくなったよ」

「どうして?」妻は目をひらいた。

「あの日は、お得意たちの手前、僕には何もできなかった。東京に帰っても彼らにつきあわないわけにも行かず、ビールを飲んで夜になってから家に帰った。すると、君はまったくいつもと変らない顔や態度でいるじゃないか。