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きく

親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選

山川 方夫

山川方夫『親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:菊、トンボの死、ロンリー・マン、愛の終り、赤い手帖、暑くない夏、あるドライブ、恐怖の正体、蒐集、ジャンの新盆、博士の目、はやい秋、非情な男、メリイ・クリスマス。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 67,486 字 · 144 页

青空文庫

老婆は、ニコニコしてこっくりした。

「壺をゆずってもらえないか?」

「……まあ、おすわり」老婆はしわがれた声でいった。

「それで、なにがほしいのかね?」

「壺だ。壺だけだ」

言葉の不自由にいら立ちながら、彼はいった。すると、老婆は白濁した老人特有の瞳を動かし、遠くをみつめるような目つきをした。

「……ずいぶん前のことだ、やはりお前と同じような一人の白人が来た」と、やがて老婆はいった。「かれも、壺をくれといった」

「ボーモン?」

「さあ、そんな名だったかね」老婆は目を細めた。「でもその白人の望みは、本当は壺ではなかった。私からキリウイナの儀式のしきたりを聞き出すのが目的だった」

「でも私は違う。私はその壺を見て、わざわざやってきたのだ。私の望みは壺だけだ」

早口にサンバードはいい、喉に言葉がひっかかった。一刻もはやく壺を自分のものにしたい気持ちで、彼はハラハラしていた。

まあ落着け、というような手真似をすると、老婆は立上って戸棚の上から壺の一つを下した。それも同形の見事な壺だったが、ボーモンの言葉どおり、中には酒が入っていた。芳香のつよいその酒を器に注ぎ、老婆は彼にすすめた。