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おやかたコブセ

親方コブセ

金 史良

「新潮 通卷四百四十四號(一月號)」新潮社、1942(昭和17)年1942(昭和17)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,006 字 · 16 页

青空文庫

小さい親方コブセはそれを見ると、背瘤をうねらせながら、さも得心がいったように奇妙な声音でへへへへとせせらわらい出した。「その調子、その調子! やはりお前は可愛い悧口もんだよ!」それから手荒く戸をがらりと開けて飛び出すなり、手首を両脇でひらひら振りながら地を這うように向側の部落へ駆けて行った。おまけにひどい跛引きだったが、依然として勝鬨を挙げるようにへへへへとわらい続けている声がかすれがちに聞えて来た。娘さんが愉快そうにくすくすとわらった。暫し茫然となっていた私は、そうだ、あの男に訊けばいい筈だぞと、そこを抜け出して後を追駆けるように部落の中へ踏み込んで行った。親方コブセとO君は親友だということを知っていたからである。しかし彼はどこをどう這い込んで行ったものか、私はすぐに彼の姿を見失ってしまった。人々に訊こうにも、婦達が怪訝そうにじろじろ見るので、余計訊けなくなり、小屋に踏み込んで呶鳴られないように気を配りながら、直ぐ四五間先に海の迫っている路地の中をうろつき廻った。奥まった割に大きな小屋の中からは、長鼓の音と共に賑やかな男達の唄声が聞える。その前に立ち止ってもぞもぞしていると、一人の男が七輪を持って出て坐り込みながら、