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かんてんときょり
観点と距離
寺田 寅彦
「文芸春秋 第十二年第八号」1934(昭和9)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,969 字 · 4 页
この解釈は間違っているかもしれないが、しかしいくらかこれを支持するような事実が他にも若干ある。
太陽や月の仰角を目測する場合に大抵高く見過ぎる。その結果として日出後または日没前の一、二時間には太陽が特別に早く動くような気がする。
山の傾斜面でもその傾斜角を大きく見過ぎるのが通例である。
これらと少し種類はちがうが、紙上に水平に一直線を描いて、その真中から上に垂直に同長の直線を立てると、その垂直線の方が長く見える。顔の長い人が鳥打帽を冠ると余計に顔が長く見えるという説があるが、これもなんだか関係がありそうである。
芸術写真の一つの技巧として、風景などの横幅を縮め、従って、扁平な家を盛高く、低い森を高く見せてそれで一種の感じを出すのがある。あれなども、ユークリッド的には真実を曲げた嘘の写真であるが、心理的には却って真実に近くなるという場合もあるかもしれない。
画家のいわゆるデッサンが正しいとか正しくないとかというものも、やはりこういう意味で心理的に真実な描写をするという意味らしく思われる。これを極端までもって行くとカリカチュアが一番正確な肖像画になる勘定である。