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かいせつ(『ふうちそう』)

解説(『風知草』)

宮本 百合子

「風知草」文芸春秋選書、文芸春秋新社、1949(昭和24)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,966 字 · 24 页

青空文庫

警察の特高と※母たちとの応酬も短いうちにティピカルなものを示している。重吉対ひろ子、臼井とタミノの対照で、階級的な愛情の問題にもふれられている。正面から階級闘争をとりあげているという意味で、この「乳房」は、正統的なプロレタリア文学の作品として、公表されることのできた最後の作品であったということができる。プロレタリア文化、文学団体は前年に解散してしまっていて、文学の面ではもうそのころ没階級的なリアリズム論が氾濫していた。武田麟太郎の市井的のリアリズムと、島木健作の凄みズムと亀井勝一郎その他の日本ロマン派と入りみだれていた。この「乳房」が、作家にとって数年をけみしながらいわばはじめて芸術作品らしいリアリティーをもって完成された作品であったと同時に、それが客観的には従来の意味でのプロレタリア文学の最後の一篇として存在したことも意味ふかいことである。

「乳房」は一般に好評であった。ただ、ブルジョア文学の読者の間には、わかりにくい、むずかしい、という批評があった。「乳房」に即して、このむずかしいという批評を分析してみると、それは作者の表現の到らなさというよりも、より多く当時公表された小説がめぐり合わせている検閲の制約によっている。