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かいせつ(『ふうちそう』)
解説(『風知草』)
宮本 百合子
「風知草」文芸春秋選書、文芸春秋新社、1949(昭和24)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,966 字 · 24 页
一九四〇年(昭和十五年)十月に執筆した「朝の風」一篇は、もうこの作者が、小説としてかきたい主題は書くことのできない社会的情況にまで軍事統制が進んでいることを明瞭に示した。客観的な意味で、書きたいテーマはかけなくなっていた。出征という一つの客観的事実を扱っても、それは人間が平常の状態を失いつつある生活現実であってはいけなかったのだから。――出征は勇躍万々歳でなければならず、人民のつつましい生活の中から働く男、経済の支柱が奪われてゆくに際しての家族たちの限りない不安。夫婦、親子、兄妹の愛さえも、それは天皇と国家への捧げものと見られなければならず、そこには別離の愛惜と生命への不安と絶対的な権力への疑問抗議は、当時の日本人の心に存在してはならなかったのであった。
作者は、五年間の強いられた沈黙をむしろ必然なものとして感じるようになった。主観的にわるあがきする余地さえ対世間的にはのこされていなかった。獄中のひとのための公判準備、その公判の傍聴、毎日数頁ずつ書き送る手紙。防空壕へ出たり入ったり。炊事。断続する読書。そういう風に五年が経過した。
一九四五年の八月十五日が来た。