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かいせつ(『ふうちそう』)
解説(『風知草』)
宮本 百合子
「風知草」文芸春秋選書、文芸春秋新社、1949(昭和24)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,966 字 · 24 页
という一篇の小説の世界をつらぬいて流露された歓喜と悲哀に通じるものであった。悲しさも、歓ばしさも、そのすべてが人民として共通に生きぬかれた野蛮な歴史の暴威と崩壊。新しく心ごころに感じられはじめた生の甦りの感覚として。
「風知草」については、先ずその題のよみかたが、ふたとおりになっている。「ふうちそう」とよむよみかたと「かぜしりぐさ」と読むよみかたと。作者は「かぜしりぐさ」とよむことは知らなかった。夏の夜店の植木屋の葭簀ばりのそばで青々と細葉をしげらせたその鉢植を買ったとき、植木屋はそれを「ふうちそう」とよんだ。わたしは、ああ、そのほっそりした葉がかすかな風の渡るときにもそよぐからだろうと納得していたのだった。二三年たって、同じ草の鉢がさし入れられて、巣鴨の蒸し釜のような女舎のせまい板じきにおかれた。その三畳の室は風通しというものが全くなかった。暑気に喘ぎながら、わたしはその細い葉の一端でもそよがせる微風――といわないまでも空気の動きを求めた。しかし、その細い青いむら葉はわたしがその室の中で昏倒してしまうまでそよっとも動くことがなかった。さし入れ通知の紙に、ふうち草鉢植一とかかれていてわたしはその下に、赤いにくで爪印をおしたのだった。