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げんごたいのぶんしょうとうきぐも

言語体の文章と浮雲

幸田 露伴

「二葉亭四迷」易風社、1909(明治42)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,497 字 · 3 页

青空文庫

もっとも某先生の助力があったという事も聞いて居ますが、西洋臭いものの割には言葉遣などもよくこなれていて、而して従来のやり方とは全然違った手振足取を示した事は少からぬ震動を世に与えて居りました。勿論あれが同じあのようなものにしても生硬粗雑で言葉づかいも何もこなれて居ないものでありましたならば、後の同路を辿るものに取って障礙となるとも利益とはなっていなかったでしょうが、立意は新鮮で、用意は周到であった其一段が甚だ宜しくって腐気と厭味と生煮とを離れたため、後の同路を辿るもののために先達となった体になったのでありましょう。私なぞは当時あの書に対して何様な評をしたかと云うと、地質の断面図を見るようでおもしろいと云って居りました。

其後同君の文を余り目にしませんでしたが、近く「二狂人」や「ふさぎの虫」等の翻訳、其から色色の作を見まして漸く文壇の為に働かるる事の多くなって来たのを感じて居りました中、突として逝去の報に接したのは何だか夢のように思えてなりません。近来の事は私が申さいでもいいから態と申しません。ただ同君の前期の仕事に抑々亦少からぬ衝動を世に与えて居ったという事を日比感じて居りましたまま、かく申ます。