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はなしのたね

話の種

寺田 寅彦

「東京朝日新聞」1907(明治40)年9月~1908(明治41)年10月(不定期88回連載)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,082 字 · 64 页

青空文庫

(明治四十年十月二日『東京朝日新聞』)

十二

風車の利用

風の力の大きい事は云うまでもない。この力を原動力に利用して各種の作業をすれば利益があるだろうという事はよく人の考える事だが、ただ一つ困る事は、風は至って気まぐれ者で、思う時に思うように吹いてくれぬので、始終きまった馬力を要する器械にはちょっと使いにくい。しかしこれには蓄電池という都合のよいものがあって、風の力を電気の力に変じて蓄え、必要に応じて勝手に使う事が出来るのである。現に英国バーミンガムでは十一年前から風車で電灯を点じている人がある。その風車は直径三十五フィートでこれを五十フィートの櫓の上に据え付け、十六燭の電灯二百個を点ずる外に、なお五馬力のモートル三個を運転しているが、未だかつて停電などを起さぬという事である。石炭や水力を得難い土地では風車を用いた方が石油機関よりは利益だという。

(明治四十年十月三日『東京朝日新聞』)

十三

霧中の汽車信号

鉄道線路の傍に巨人のごとく直立しあるいは片手あるいは両手を拡げて線路の安否を知らせる普通の信号標は、通常の天気ならば昼夜の別なく有効であるが、ただ霧が掛かって数歩の外は見え分かぬような日には何の役にも立たぬ。