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はなしのたね
話の種
寺田 寅彦
「東京朝日新聞」1907(明治40)年9月~1908(明治41)年10月(不定期88回連載)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,082 字 · 64 页
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六十一
猿と蛇
いろいろの動物について試験してみると、蛇を怖れるは猿猴の類に限る、但しその中で狐猿という一種のみは蛇をしかけても平気だという。
窒扶斯菌の寿命
北米シカゴ市ではミシガン湖から用水を取っているので市中の下水を湖水に流し込む訳に行かぬ。それで下水溝渠はすべてこれをミスシッピイ河に放流してしまうようになっている。ところでその下流なるセントルイ市で窒扶斯が蔓延し、これはシカゴの病菌が下水とともに河を下って来るためだろうというところからやかましくなり、その結果、窒扶斯菌が水中で幾日間生きているものかという問題を研究せねばならぬ事になった。そこで色々試験をしてみた結果だというのを聞いてみるに、普通下水溝渠のごとき汚水中では精々四日間くらいしか生きていぬが、水が清浄なほど永く生きているそうである。しかし日光がよく当ればそれだけ早く死ぬる。いずれにしてもシカゴからセントルイまで三百二十二マイルの流れを下るには十一日くらいかかるから、この間には病菌は大抵死滅するだろうという事に帰着したようである。ついでに人体や湿土中における該菌の寿命は数週ないし数月にもわたるという。