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はなしのたね
話の種
寺田 寅彦
「東京朝日新聞」1907(明治40)年9月~1908(明治41)年10月(不定期88回連載)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,082 字 · 64 页
尤も汲み出した時にはオゾンの臭気がするが、これはすぐに消失するという事である。
(明治四十一年五月十九日『東京朝日新聞』)
八十一
パリの高塔
有名なパリのエイフェル塔は近年しばしば無線電信の発信所に用いられたが、近頃仏国学士院のブーケ・ド・ラグリー氏はこの塔を利用して遠近の海岸を航海しつつある船舶に正確な時刻を電報し、航海に最も必要な時辰儀の調整をさせたらよかろうという事を建議した。仏国政府はこれを容れ、先ず手始めとして大西洋および地中海を航行する自国の船について試験をする事になったという。パリの夜の正零時に信号を発すると、海上の船は一斉に時計を験して幾何の遅速があるかを知る事が出来る。夜中を選んだのは畢竟無線電信には夜間の方が故障が少ないためだという。
金剛石と炭
金剛石はほとんど純粋な炭素から出来たもので、これを空気中で高熱すれば燃えて炭酸瓦斯に変る事は人のよく知るところである。近頃ある人が金剛石を真空管内に封入し、これに強い陰極線を当ててみたところが、金剛石は摂氏二千度近く熱せられ真黒な骸炭に変化したそうである。