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にんしきろんとはなにか

認識論とは何か

戸坂 潤

「認識論」戸坂潤、山岸辰蔵、三笠書房、1937(昭和12)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,432 字 · 116 页

青空文庫

で道徳は、生きた認識過程としては、思想活動としては、文芸其の他の芸術に於てしか存しない、とさえ云うことが出来るだろう。吾々は道徳という観念が何であるかを、必ずしも明らかにして持っているわけではないのだから、右のような仕方でこの観念を検討し直すことが、認識論上の収穫を約束するためには有効ではないかと考える。

第三に、道徳に較べて宗教という文化の衣裳の方は、すでに多少整理の方針が立てられて来ている。之を観念論の倒錯した特殊の形態として、一般的に概括することが行なわれているからだ。もし宗教の或るもの或る場合が、文化否定の立場に立つが故に、之を文化に数え得ないと云うなら、併しそういうものも、文化としては文化の衣裳を纏わざるを得ないということに注目すればよい。文化として存在しない以上は、それは今の場合の吾々にとっては無であるからだ。

所謂宗教と呼ばれるものが、個人的又は一群の個人に共通な単なる生活信念に止まる限り、夫は云わば私事にぞくする。そういうものを歴史家は併し宗教とは呼ばない。或る文化的な発達物であって初めて宗教の名に値いする。社会に於ける支配層や被支配層に対する交渉に於て、教化・布教・政治的利用・流布・等々の歴史的交渉に於て、初めて宗教という観念に嵌まって来るのだ。