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にんしきろんとはなにか
認識論とは何か
戸坂 潤
「認識論」戸坂潤、山岸辰蔵、三笠書房、1937(昭和12)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,432 字 · 116 页
これはタイプのオリジナリティーによってよりも、寧ろそのタイプを通して描写された心理の法則性によって、読者を打つ。このサイコロジーは殆んどロジックと云っていい位いだ。之に反してメリメの『カルメン』の恋の魅力は、心理描写によるよりも専ら性格描写によるものだろう。読者はカルメンの心理の必然性によってよりも、彼女の性格のあまりに鮮かな印象に撃たれる。彼女の浮気な心理がなぜああ動くのか判らぬ点を、読者はカルメンの性格というものによって理解するのだ。サイコロジーは表面に出ていないと見てもいい。序でにもう一つの恋物語を引き合いに出すならば、デュマ・フィスの『椿姫』がいいだろう。之は最も純粋な恋愛情緒を物語るが、決してサイコロジーを描いて優れたものではあるまい。
でつまり、サイコロジーはただの情緒や意欲ではなくて、之を動かし之を貫くメカニズムのことだ。私はなぜ之をロジックと区別せねばならぬか、理解するに苦しむ。蓋し心理と論理との区別なるものは、ごく便宜的な一応のものであるのか、それとも何か他の区別を漫然とこういう常識的区別の惰性で置きかえたのか(例えば文学に於ける思想性と無思想性との区別などの代理として)、そうでなければ研究室の哲学的アカデミシャンが、論理を論理学と考え、心理を心理学と考える、一種の職業的錯覚によるので