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いかにどくしょすべきか

読書と人生

三木 清

三木清『読書と人生』。同一底本的分册已合并为一书。收入:如何に読書すべきか、軽蔑された翻訳、書物の倫理、西田先生のことども、ハイデッゲル教授の想い出。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,486 字 · 57 页

青空文庫

かようにして私は友人と別れて唯ひとり京都へ行ったのである。中学を出て一高に入学した時にも、私は友達と離れて一人であった。つねに一人歩くことが何か自分の運命であるかのように思われて淋しかったが、それでもあの時はただ漠然とした憧れで田舎から東京へ上ったのに、今度は逆に東京から京都へ下ることであったにしても、はっきりした目標があったので勇気を与えられた。

その時分は九月の入学であったが、七月の初め、私は帰省の途次、速水先生の紹介状を持って洛北田中村に西田先生を訪ねた。どんな話をしたらいいのか当惑していると、先生は出てこられるとすぐ「君のことはこの春東京へ行った時速水君からきいて知っている」といって、それから大学の講義のこと、演習のことなどについていろいろ話して下さった。哲学を勉強するには先ず何を読めばいいかと尋ねると、先生は、カントを読まねばならぬといって『純粋理性批判』を取り出してきて貸して下さった。その頃は世界戦争の影響でドイツの本を手に入れることが困難で、高等学校の友人の一人がレクラム版の『純粋理性批判』のぼろぼろになったのを古本屋で見附けてきて、得意気にいつも持ち廻っているのを、私どもは羨みながら眺めていたというような有様であった。