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どくしょへんれき
読書遍歴
三木 清
「文芸」1941(昭和16)年6月~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,120 字 · 72 页
私の最も親しくするようになった宮島鋭夫に誘われて、ある夏私は彼と一緒に鎌倉の円覚寺の一庵に宿り、坐禅をしたこともある。一日禅坊を出て、宮島の知っている堀口大学氏が浄智寺に来ておられるというので訪ねたことがある。堀口氏に会うといつもあの頃のことを思い出すのであるが、まだ口にしないのである。恐らく堀口氏の記憶には残っていないことであろう。
六
私の文学熱はこうして冷めていった。中学を卒業する前、将来は文学をやろうと考えて、当時鹿児島県に移っておられた寺田喜治郎先生に手紙で相談し、先生からは勧めの返事をいただいたのであるが、一高の文科に入ってからはそうした考えはむしろ薄らいでいった。私は文学に対しても懐疑的になっていた。弁論部に関心がなかったと同様、文芸部にも興味がなかった。一年生の時にはかえって一時剣道部に席をおいたことがある。こうした私は芹沢慎一氏――光治良氏の令兄――にひっぱられてボート部に入り、組選を漕ぐことになった。墨田川に行ってボートを漕ぐことは、運動は元来不得手であるにもかかわらず、当時懐疑的になっていた私にとって一つの逃避方法であった。