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どくしょへんれき

読書遍歴

三木 清

「文芸」1941(昭和16)年6月~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,120 字 · 72 页

青空文庫

かようにして読んだ本のうちでも何か深く影響されたものがあるとすれば、それは新カント派の哲学であった。しかしそれも、意識的にではなく、むしろ知らず識らずそういうことになっていたのである。ある時の哲学会の例会で、私どもの先輩であった土田杏村氏が話をされた後で、私は質問をした。何の問題であったか記憶していないが、土田氏と私との議論になってしまい、なかなか終りそうになかった。そこで土田氏が、会に出ていられた西田先生を顧みて「先生、どうですか」と尋ねると、先生は「君の考えは現象学のようなもので、三木の考えは新カント派のようなもので、どちらがよいか、むつかしい問題だ」という意味のことを答えられた。先生からそう言われて初めて私は自分の考えが新カント派的であることに気づいて、いつのまにか深くその影響を受けていたのにむしろ驚いたことである。

私がかように新カント派の影響を受けたのは、高等学校の時の読書会でヴィンデルバントを読んだことが素地をなしていたのであろうが、その時代のわが国の哲学の一般的傾向にも関係があったであろう。すでにいったごとく私が大学に入学した大正六年は、西田先生の画期的な書物『自覚における直観と反省』