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どくしょへんれき
読書遍歴
三木 清
「文芸」1941(昭和16)年6月~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,120 字 · 72 页
この動きは私の眼には二つの方向に現われた。その一つはいわゆる政治史から文化史への動きである。ドイツの史学界で盛んに闘わされた「政治史か文化史か」という議論は日本にも移され、歴史の新しい方向および方法として、政治史に対する文化史が主張された。中にも和辻哲郎氏の活動が私ども一般の青年には際立って見えた。ランプレヒトの『近代歴史学』が和辻氏によって翻訳されて現われた。それは私の卒業の前年の晩秋のことで、自動車事故のため松山病院というのに入院していた時、見舞に来て下さった田辺元先生からその新刊の本をいただいたので、私は今でもよく記憶している。和辻氏の著書『古寺巡礼』(大正八年)や『日本古代文化』(大正九年)は新鮮な印象によって広く読まれたが、私も興味深く感じた。しかしその頃京都大学で内田銀蔵先生が専門家として日本経済史その他の方面で立派な仕事をしていられたのにあまり注意しないでいたことを、私は後悔している。第二の動きは世界史への方向である。これは私には一層影響の多いものであった。特に坂口昴先生の『世界におけるギリシア文明の潮流』(大正六年)は私にとって忘れ難い書物である。