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なぞのくびかざりじけん
謎の頸飾事件
山本 周五郎
「少年少女譚海」1931(昭和6)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,265 字 · 15 页
「ふん、君はなかなか立派な意見を持っている、では君には事件はもう分っているのかね」
「ええ、そうですよ樫田さん!」
龍介は軽く笑って答えた。
「僕にはもう誰が犯人で頸飾がどこに隠してあるかということまで分っているんです」
樫田刑事は、まるで擽ぐられたゴリラのような珍妙な顔をして、まじまじと龍介君を見守るばかりだった。
その時、寝椅子の上に休んでいた小間使は立上って、ふらふらと洗面台の方へ近よった。龍介君は急いでそれをさえぎって、
「どうするんだね、君」
「私、打たれた傷が痛みますから、お水で冷やさせて頂こうと存じまして」
「あとで!」と龍介君はいった。そして小間使を元の寝椅子におい帰した。
「そんなことはあとでたくさんできるよ、まあ静かに坐ってい給え。そこで秋山さん、失礼ですが、今夜この宴会へくる途中、どこか外にお立寄りになったところはないかお話し下さいませんか」
秋山紳士は、自分にかけられた疑が解かれそうになったので、元気を取戻しながら話した。
「そうです、家を出まして銀座で二軒用事をたしました、一軒は日本屋という洋服屋で、春服の仕立を頼んだのです。それから泰昌軒という支那人の陶器店へよって、七宝焼の壺を買いました、それだけです」