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ぶたきちとヒョロこ

豚吉とヒョロ子

三鳥山人

「九州日報」1926(大正15)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,498 字 · 111 页

青空文庫

「お前さん方は何です。人並外れた身体をしながら当り前の橋賃でこの橋を渡ろうなんて、ずいぶん図々しい横着な人ですね。私を年寄りだと思って馬鹿にしているのだね。そんなことを云うなら、この橋はどんなことがあっても渡らせないから、そうお思い」

豚吉はその勢の恐ろしいのに驚いてふるえ上ってしまいました。けれどもこの橋を渡らなければ町へ行かれないのですから、豚吉は元気を出してお婆さんを睨み付けました。

「この婆は飛んでもない奴だ。貴様はだれに云いつかってこの橋の渡り賃を取るのだ」

「生意気なことをお云いでない。あの向うの橋の渡り口を御覧……あすこにお役所があるだろう。あのお役所の云い付けでここに番をしているのが、お前さんたちはわからないか。愚図愚図云うとお前さんたちの首に縄をつけて、あすこのお役人の所へ連れて行つて獄屋に打ち込んでしまうが、いいかい」

と大変な勢いです。豚吉は又青くなってしまいました。

さっきからこの様子を見ていたヒョロ子は、この時そっと豚吉の袖を引きまして、こう云いました。

「およしなさい。こんなお婆さんと喧嘩をするのは……。それよりもこの河は浅そうですから、私があなたを背負って渡りましょう」