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ぶたきちとヒョロこ
豚吉とヒョロ子
三鳥山人
「九州日報」1926(大正15)年1~3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,498 字 · 111 页
おれは白くなるお薬を知っているんだ。サア、殺すなら殺せ」
これを聞くと、みんな一時に静まりました。そうしてその中から一人のお爺さんが出て来て、
「私たちがわるう御座いました。どうぞそのお薬を教えて下さいませ」
とあやまりますと、ほかのものも地びたに手を突いて一生けんめいお詫びをしました。
それを見ると無茶先生はうなずいて、
「よしよし。それなら貴様たちからこの宿屋の主人に頼んで、おれたちを泊めてくれるようにしろ」
と云いました。
宿屋の主人はこの時まで、自分のおかみさんや子供達が真黒になって泣いているのを見て、ボンヤリ突立っておりましたが、忽ちピストルを取り落すと、無茶先生の前に跪いて、真黒な顔を畳にすり付けながら、
「どうぞどうぞお泊り下さいお泊り下さい」
とピョコピョコお辞儀をして、手を合わせて拝みました。それを見ると無茶先生は大威張りで、
「それ見ろ。おれの云う通りだ。そんなら泊ってやるからうんと御馳走するのだぞ」
「ヘイヘイ。どんな御馳走でもいたします」
「よし。それじゃ教えてやる。みんなの顔が黒くなったのは、この煙草の脂がくっついたのだ。だからお酒で洗えばすっかり落ちてしまう。