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ぶたきちとヒョロこ

豚吉とヒョロ子

三鳥山人

「九州日報」1926(大正15)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,498 字 · 111 页

青空文庫

けれどもお前たちがそんな心になれば、いつでもお前達の身体を立派な姿にしてやる。ちょうどいい。もう山奥は通り過ぎて人間の居る村に近付いている。あれ、あの音をきいて御覧」

と向うの方を指しました。

無茶先生が指した方を向いて豚吉とヒョロ子が耳を澄ましますと、一里か二里か、ズッと向うの方から、

「テンカンテンカンテンカンテンカン」

と鍛冶屋の音がきこえます。

「アッ、鍛冶屋の音が!」

「人間が居る」

と、二人は飛び上って喜びました。そうして無茶先生と一所に大急ぎでそちらへ近づきましたが、やがてとある崖の上へ出ますと、向うは一面の田圃で、すぐ眼の下には川が青々と流れて、その流れに沿うた道ばたの一軒の家から、最前の鉄槌の音が引っきりなしにきこえて来ます。

「ヤア。ちょうどいい処にあの鍛冶屋はあるな。よしよし、あの家を借りてお前たちを立派な姿に作りかえてやろう。ちょっと待て。あの家の様子を見て来るから」

といううちに無茶先生はグルリと崖のふちをまわって、その家の門の口へ来ました。

見るとこの家の主人は五十ばかりのお爺さんですが、独身者と見えてお神さんも子供も居ず、たった一人で一生懸命鉄槌で鉄敷をたたいて、テンカンテンカンと蹄鉄を作っています。