轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ひょう
豹
山本 周五郎
「アサヒグラフ」1933(昭和8)年9月20日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,656 字 · 14 页
「遠慮することないわ、兄さんのもときどき流してあげたんです」
「大丈夫です、僕ひとりでやれます」
純子はくくと喉で笑った。
「ばかねえ、ひとりで洗えるのは分ってますよ、子供じゃあるまいし」
正三もしかたなく笑った。純子はこのまま風呂場を出ていった。
夕食の膳についたとき、
「豹が逃げたんですって――?」
と訊くと、純子は興の無さそうなようすで、
「そうね、何だかそんな話よ」
と答えたきりだった。給仕していた女中は、口を※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)みたくてむずむずしていたが、純子の気性を知っているので、口裏までこみあげてくる饒舌慾を懸命に我慢しているようすだった。一政はいつもさきに食事をして、子供部屋へやられる習慣だったので、もうそのときは向うの部屋で中働きのお芳と歌をうたって遊んでいたから豹の話はそのままになってしまった。
食事のあとで、応接間に使っている部屋へ行って珈琲を啜っているところへ隣家の和田という神戸で貿易商をやっている男がやって来た。頭の薄禿になった好色らしい四十男で、何かしら口実を設けては接近し、いやな眼つきでひとを見るというのでひどく嫂は嫌っていた。