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かいのあなにかっぱのいること
貝の穴に河童の居る事
泉 鏡花
「古東多万 第一年第一號」やぼんな書房、1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,260 字 · 32 页
木菟が、ぽう、と鳴く。
社の格子が颯と開くと、白兎が一羽、太鼓を、抱くようにして、腹をゆすって笑いながら、撥音を低く、かすめて打った。
河童の片手が、ひょいと上って、また、ひょいと上って、ひょこひょこと足で拍子を取る。
見返りたまい、
「三人を堪忍してやりゃ。」
「あ、あ、あ、姫君。踊って喧嘩はなりませぬ。うう、うふふ、蛇も踊るや。――藪の穴から狐も覗いて――あはは、石投魚も、ぬさりと立った。」
わっと、けたたましく絶叫して、石段の麓を、右往左往に、人数は五六十、飛んだろう。
赤沼の三郎は、手をついた――もうこうまいる、姫神様。……
「愛想のなさよ。撫子も、百合も、あるけれど、活きた花を手折ろうより、この一折持っていきゃ。」
取らしょうと、笛の御手に持添えて、濃い紫の女扇を、袖すれにこそたまわりけれ。
片手なぞ、今は何するものぞ。
「おんたまものの光は身に添い、案山子のつづれも錦の直垂。」
翁が傍に、手を挙げた。
「石段に及ばぬ、飛んでござれ。」
「はあ、いまさらにお恥かしい。大海蒼溟に館を造る、跋難佗竜王、娑伽羅竜王、摩那斯竜王。竜神、竜女も、色には迷う験し候。