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かいのあなにかっぱのいること

貝の穴に河童の居る事

泉 鏡花

「古東多万 第一年第一號」やぼんな書房、1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,260 字 · 32 页

青空文庫

に立っている。

御柱を低く覗いて、映画か、芝居のまねきの旗の、手拭の汚れたように、渋茶と、藍と、あわれ鰒、小松魚ほどの元気もなく、棹によれよれに見えるのも、もの寂しい。

前へ立った漁夫の肩が、石段を一歩出て、後のが脚を上げ、真中の大魚の鰓が、端を攀じっているその変な小男の、段の高さとおなじ処へ、生々と出て、横面を鰭の血で縫おうとした。

その時、小男が伸上るように、丸太棒の上から覗いて、

「無慙や、そのざまよ。」

と云った、眼がピカピカと光って、

「われも世を呪えや。」

と、首を振ると、耳まで被さった毛が、ぶるぶると動いて……腥い。

しばらくすると、薄墨をもう一刷した、水田の際を、おっかな吃驚、といった形で、漁夫らが屈腰に引返した。手ぶらで、その手つきは、大石投魚を取返しそうな構えでない。鰌が居たら押えたそうに見える。丸太ぐるみ、どか落しで遁げた、たった今。……いや、遁げたの候の。……あか褌にも恥じよかし。

「大かい魚ア石地蔵様に化けてはいねえか。」

と、石投魚はそのまま石投魚で野倒れているのを、見定めながらそう云った。

一人は石段を密と見上げて、

「何も居ねえぞ。