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ふしょうしたせんろとつき
負傷した線路と月
小川 未明
「赤い鳥」1925(大正14)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,078 字 · 9 页
すると、ある停車場の構内に、ここからは、遠くへだたっている平原の中のレールから聞いた番号の汽罐車がじっとして休んでいました。
月は、さっそく、汽罐車の上へたどりつきました。そして、いつものように、静かな調子で、
「どうして、そんなに、沈んで、じっとしているのだ。」といって、たずねました。
汽罐車は、月に、こういって話しかけられると、はじめて、口を開きました。
「私はどんなに、疲れているかしれません。毎日、毎日、遠い道を走らせられるのです。そして昨日は、いままでにない重い荷をつけさせられていたので、一つの車輪を痛めてしまいました。私は、あの重い荷物と車室の中で、そんなことには無頓着に、笑ったり、話したりしていた人間が、憎らしくてしかたがありません……。」と訴えたのであります。
「そんなら、おまえも、体をいためたのか?」と、月は問いました。
「そうです。どこかでレールとすれ合って、一つの車輪を傷つけました。」と、汽罐車は答えました。
月は、それを聞くと、だれが悪いということができなかった。そして、レールを傷つけたといって汽罐車をしかることもできなかったのであります。