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へんさいじょき
貢太郎見聞録
田中 貢太郎
田中貢太郎『貢太郎見聞録』。同一底本的分册已合并为一书。收入:変災序記、死体の匂い、日本天変地異記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,162 字 · 59 页
新井白石もこの地震に逢ったので、「折り焼く柴の記」の中には、その夜の江戸の地震の光景を精細に叙述してある。この地震は安政の地震に匹敵する大地震で、その数日前即ち十一月十四日の外には、その前ぶれのように四谷塩町から出た火が、青山、赤坂、麻布、品川を焼いて、元禄の豪奢に酔うていた江戸市民に警告を与えたが、地震の後でもまた火事があって、怯えている市民の心をいやが上にも怯えさした。それは地震のあった月の二十九日で、本郷追分から出火して、谷中まで焼き、一方は小石川の水戸邸から出火して、上野湯島天神、聖堂筋違橋、向柳原、浅草茅町、南は神田から伝馬町、小舟町掘留、小網町、それから本所へ飛火して、回向院の辺、深川。そして永代橋の西半分を焼いて翌朝になって鎮まった。それには千三百の焼死者があった。
江戸ではその火事を地震火事と言った。江戸の火事のことを言うと、その以前寛永十八年正月にも大火があり、明暦三年正月十八、十九の両日にも大火があった。わけて明暦の大火は江戸未曽有の大火であったから、市民は由比丸橋の残当の放火であろうと言って恐れ戦いた。それは明暦三年正月十八日の未の刻で、本郷丸山の本妙寺の法華宗の寺から出火して、折りからの北風に幾派にも分れた火は、下谷の方は神田明神から駿河台へ飛火し、鷹匠町の辺、神田橋の内へ入って