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ひんみんくらぶ

貧民倶楽部

泉 鏡花

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页

青空文庫

車中の婦人はこれが始終を見物しながら、貴族たる権威の発表せられしを歓べる色ありきという。

「一体事実でございますか。」と綾子は眉を顰めて問えり。

貞子の方は言葉縮まり、窮して応うる処を知らず。

読来りて眉動き、読去りて蒼くなりぬ。

見る間に太る額の蒼筋、癇癪持の頭痛病にて、中年以来丸髷に結いしこと無き難物なれば、何かはもって堪るべき。呼鈴を烈しく鳴して、「矢島をこれへ。」と御意あれば、畏まりて辷出づる婢と入違に、昨日馬を馭せし矢島由蔵、真中の障子を開きて縁側に跪き、

「もはや御耳に達しましたか、何ともはや恐入りました。」と続様に額を下ぐ。

夫人は御褥を辷らしたまいつつ、「金次に早速暇を出しゃ、其方もきっと謹むが可かろう。」との御立腹。

「はッ、仰一応御道理、御言を返しましては恐多くござりまするが、あれが死にましたは何も金次の知ったことではござりませぬ。」

綾子も夫人もぎょっとして、「ええ、死んだと。」

「はッ、いつも朝御飯を戴いて外へ出ますのが、今日は御玄関が開くとそのまま飛出しました。これが前兆と申すのでございましょうか、誠に争われぬもので、御愁傷様。