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ひんみんくらぶ
貧民倶楽部
泉 鏡花
「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页
私が来たからとてそう改まっては不可じゃ。このとおり寝衣のままじゃがの、実はもう寝ようと思いおった処、若い人の声が聞えるもんじゃで、急に浮世が恋しゅうなっての、とうとう娑婆へ出て参った。」と呵々と笑い、葉巻をはたきてまた咬え、「さて、何か、家の御主人から聞けば慈善会へ毛虫が集ったそうじゃな。いや、定めし御困りじゃったろ。怪しからん、また毎晩新聞で悪口を申したってな、悪い奴らじゃ。」
と烟草を差置き、唇を両三度手巾にて押拭い、その手をすぐに返して髯を扱く。
年紀は孫ほどの照子、強請るがごとき口吻にて、
「御前、どうか遊ばして下さいよ。私等は口惜くて口惜くて仕様が無いの、ああいう乱暴な貧民は何人あろうと、一人々々ふん縛るわけには参りませんか。」
「不可ません、そういたすとまた新聞で散々悪体を申すだろうじゃございませんか。」とは在原夫人、御自分経験があればなり。
「新聞が邪魔になるのは私等に限らぬと見える。御夫人方にも目の瘤じゃの。面倒なら停止をさそうか。」「そういたして頂きましょうか、ねえ。貴女。」と在原夫人左右に問えば、「そうね、それが可うございましょう。