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ひんみんくらぶ

貧民倶楽部

泉 鏡花

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页

青空文庫

」

ナンノで皆解ると見え、時次郎は委細承知。「畏りました。」

「さ、これで可し。皆様、あちらで。」と手を揮ってのたまうを好き汐時と、いずれもするするはらはらと裳を捌きて御引取。

後に残る三人は眼と眼と眼にて、薄雪とは似ても非なる三人笑。

伯爵は鷹揚に、

「綾。」

「は。」

「首尾よく殺したな。」と怪しき御言葉。

時次郎手を支えて、「恐悦に存じまする。」

一人の父は納豆を売りに朝疾く起きて出行きぬ。後は孤なる女の児、年紀は七歳ばかりなるが、大人の穿切らしたる草履を引摺り、ばたばたと駈けて来て、小石に躓き、前へのめり、しばらくは起きも上らず。「あれ」と婦人の声、木賃宿の戸を開けて、内より出づる一人の美人、顔美麗しく姿優なり。片手に洗髪を握りながら走り寄りて、女の児を抱起して「危いねえ。」と労る時、はじめてわっと泣出だせり。

「おお可哀そうに痛かったかい、まあまあお召が砂だらけだ。どこも擦剥きはしなかったの。え、掌を、どれお見せ、ほんとにねえ。」と何を持ちしか汚穢き手に、温き口を接けて、呼吸を吹懸け撫でてやり、「さあ、もう可いからお泣きでないよ。おお、泣止みましたね、好い児好い児。