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ひんみんくらぶ

貧民倶楽部

泉 鏡花

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页

青空文庫

早速護摩でも焚かせねばお邸から縊死を出してどうするものじゃ。」と令夫人は大きに担ぐ。殿様のごときは黒くなりて、「一度あることは二度というぞ。あの松の木今の間に伐倒せ。」と苛立ちたまう。

照子は腰元を召して、「門内に変死があるというね。どんな様子だかお前行って見ておくれ。」次第によらば、枯骨を拾わん思召、慈善家は違ったものなり。

腰元やがて復命すらく、「乞食より汚穢い婆々です、さうして塩茄子のように干乾びておりますよ。おお、胸の悪い、私が今参りました時は死骸の懐中を検べておりました。もし、姫様書附がございましてね、町所が、ああ何とやら、皆が申しましたっけ。何でも鮫ヶ橋の者だそうで、名が……そうそう黒瀬ぬい。」「黒瀬ぬい――私は聞いたような。」としばらく考え、「あのそれじゃ。」と顔真蒼。

「おや、御存じ。」と腰元に顔を見られて少しく狼狽え、「直ぐ出懸けるよ。」とふいと立つ。「どちらへ。」「深川様のお邸まで。」「それではお召替遊ばしまし。」「なに、これで可い。」と紫地の行燈袴、学校行の扮装そのまま。

もはや時刻と例のごとく、車夫は玄関に待懸けたり。照子はわくせく気を急らし、腰元附添い駈出でて、永田町へ……