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ひんみんくらぶ

貧民倶楽部

泉 鏡花

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页

青空文庫

どうも放し悪い。」「早くおしよ。」ときめつけられて詮方なく一散に駈け出し、口の裡で、「御自分が独身だと思って、ちとお焼芋の方だ。どうもならねえ。」

室数多けれども至って人寡少なる深川の館は、その夜より賑わしくなれり。綾子が厚き情にて、ただにかの婦人のみならず、なお彼に附随せる犬をも加せて養いぬ。

新らしき食客は、暖かき褥に臥し、良薬を賜わりて、疾病直ちに癒えたり。渠は旧旗本の嬢なりき、幼にして両親を失い、嫁して良人を失い、人に計られて財を失い、餬口のために家を失い、軒下に眠ること実に旬余、辛酸を喫して癪に閉じられてすでに絶せんとせるとき、綾子のために救われしなり、と渠は語りぬ。

翌日早朝、犬はいずくにか出行きて、半日見えず、午後に到りて帰り来りぬ。

「夫人、好事門を出でずと申しましたけれども、ああ、善きことは致したいもの、これ御覧じまし。」と三太夫が書斎に齎したる毎晩新聞。

綾子手に採り披き見れば、深川夫人乞食を救う、と標題に圏点を附してその美徳を称讃し、気味悪きまで賞立てたり。

綾子は莞爾、「こんなに謂われてはかえって迷惑、あの女はどうしているね。