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あかいろうそくとにんぎょ
赤いろうそくと人魚
小川 未明
「東京朝日新聞」1921(大正10)年2月16日~20日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 7,102 字 · 14 页
」と、まことしやかに申したのであります。
年より夫婦は、ついに香具師のいうことを信じてしまいました。それに大金になりますので、つい金に心を奪われて、娘を香具師に売ることに約束をきめてしまったのであります。
香具師は、たいそう喜んで帰りました。いずれそのうちに、娘を受け取りにくるといいました。
この話を娘が知ったときは、どんなに驚いたでありましょう。内気な、やさしい娘は、この家から離れて、幾百里も遠い、知らない、熱い南の国へゆくことをおそれました。そして、泣いて、年より夫婦に願ったのであります。
「わたしは、どんなにでも働きますから、どうぞ知らない南の国へ売られてゆくことは、許してくださいまし。」といいました。
しかし、もはや、鬼のような心持ちになってしまった年寄り夫婦は、なんといっても、娘のいうことを聞き入れませんでした。
娘は、へやのうちに閉じこもって、いっしんにろうそくの絵を描いていました。しかし、年寄り夫婦はそれを見ても、いじらしいとも、哀れとも、思わなかったのであります。
月の明るい晩のことであります。娘は、独り波の音を聞きながら、身の行く末を思うて悲しんでいました。