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あかいガラスのきゅうでん

赤いガラスの宮殿

小川 未明

「赤い鳥」1929(昭和4)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,930 字 · 10 页

青空文庫

彼は足音を聞いて、ふと顔を上げると、やはり見知りの村の女でしたから、

「こんにちは、どこへいかっしゃる……。」と、声をかけました。女は、びっくりして、こちらを向きました。その目の中は涙にぬれていたのです。

「かわいい、大事な坊やが死んでしまって、おもちゃがあると思い出していけないから、みんな河に流してしまおうと思って、捨てにいくところだよ。」

「ほんとうに、かわいそうなことをしたな。おれに、よく悪口をいったり、石を投げたり、からかったが、あの子は、かわいい、いい子だった。おれ、ちっとも憎いと思ったことがなかったよ。」

「ほんに、おまえさんに、よくいたずらしたっけが、後生だから、悪く思って、くんなさんなよ。ちっとも悪気はなかったのだから……。」と、母親は、思い出して新しく出る涙をぬぐいました。

「おれ、坊やのおもちゃもらっておくだ。坊やのと思って、大事にするだ。おくんなせい。」

「そんだら、河さ流さんで、おまえさんにくれべいかな。」

母親は、子供のおもちゃを平三に与えたのでありました。

彼は、それを自分の小屋へ持って帰った。それらのおもちゃは、びっこの女の子のお人形や、セルロイド製のサンタクロースに似たおじいさんや、馬や、こわれかかった汽車や、そのほか絵本などでありました。