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あかいて
赤い手
国枝 史郎
「探偵」1931(昭和6)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,057 字 · 21 页
「あら、真実だわ」サディは思わず叫んだ。
「マシュースの云った通りだわ」と云いながら彼女は振向くと何を見たのか息塞る様な声を発した。彼等の背後に扉口の所に佇んでいる人があった。それはマシュースだった。彼は相変らずにやにやしながら、その眼は決定的な証拠品を凝っと見詰めていた。
「うふ、ふ」と彼は愉快そうに含笑した「好奇心が猫を殺した、と云う奴だね。君は屹度水で洗うだろうと思ったよ。だからこそ又戻って来たと云う訳さ。可なり大胆な推量だったが案外功を奏したね。これじゃ何うしても死刑もんだな」と云いながら彼は衣嚢から手錠を取出した。
「何だって?」スパイダーは怒鳴った「こんな事ぁ証拠になるもんか」
「まあ、いいさ」探偵はスパイダーの言葉に動ずる気色もなく快活に云うのだった「それは判事の前で云って貰おうよ」
手錠はかちッと音がして彼の腕に掛けられた。スパイダーは此の音にはっとなってマシュースの方へ恐しい見幕で突進しようとした。が、それは無駄だった。探偵はひらりと体をかわし、扉口に拳銃を擬して立っていた部下を差招いた。
「まあ、落ち付き給え。スパイダー。此のシンプソン君のお蔭で、自動車庫から贓品と棍棒を発見したよ。