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あかいかしゃ
赤い貨車
宮本 百合子
「改造」1928(昭和3)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,168 字 · 71 页
「死にました」
ナースチャは変にせつないように、不愉快なような表情をしてぶっきら棒に答えた。
「ふしあわせな! 二人とも死んだの? いつ?」
「饑饉の年。わたしどものところ、そりゃあ病気が流行ったんです。はじめお母さんがねて、それからお父さんがわるくなって、お父さんが十日先に死んだ。棺が二つ出ました。わたしもやっぱりその時は病気で、熱くって熱くって……窓からどんなに飛出したかったか!」
ナースチャは思い出すように室の窓の方を見たが、急に顔を近づけ、
「ごらんなさい。家じゃ兄さんが死んでから、なにもかもめちゃめちゃになっちゃったんですよ」
熱心に、低い声でささやきはじめた。
「兄さんが生きているうちは、本当になんだってあったんです。パンだって、バタだって、麦粉だって。……兄さんが死んだ時は、泣いた。お父さんも泣いた。兄さんの金時計だけは友達が持って来てくれましたけど……それはいい時計だったんです」
「その兄さんて、なにしていたの?」
「食糧のことをしていたんですけど、なんて云うんでしょうか。……兄さんはボルシェビキだったんですよ。出かける時、お父さんがそれはしっかり兄さんを抱いて接吻してね、兄さんの唇から血が出るほどきつく接吻したんです。