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あかいかしゃ
赤い貨車
宮本 百合子
「改造」1928(昭和3)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,168 字 · 71 页
村道のはずれに並木道があった。その古い菩提樹の並木道をあっちへ横切ると、石敷の歩道がはじまる。槭樹の影の落ちる歩道は八方から集って、緑のたまりのような公園となった。
公園はほとんどロシアじゅうに有名だ。天気のよい日曜日、池のまわりのベンチの上に、あらゆる賑やかなプロレタリアの色彩と笑声があふれた。ギターと手風琴の音が木立の蔭から夜まで響いた。石橋の上で、赤いプラトークをかぶった工場の娘が兵卒と踊る。公園じゅうにアイスクリーム売りの手押車と向日葵の種、糖果などを売る籠一つ、あるいは二尺四方の愛嬌よき店がちらばった。市からは工場の見学団が楽団を先頭にしてやって来る。見学団は停車場から一露里の道中でうっすり埃をかぶった大よそゆきのエナメル靴の上から、草鞋のようなカバーを麻紐でくるぶしにくくりつけ、静かに力づよく押しあいながら、エカテリナ二世宮殿の毛氈の上を歩いた。彼らが、支那皇帝がこの精力的な女皇に贈ったという堆朱の大瓶を眺めている間、そしてこのたいして美しいとも思えぬ瓶一つのために八十年間三代の工人が働いたという説明をきいて、ぼーっと頭のなかにその長い歳月についやされた工賃を反射させている時、別隊のプーシュキン見学団が、宮殿の外の往来で日にやけながら、ある家屋の軒を見上げていた。