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あかいかしゃ

赤い貨車

宮本 百合子

「改造」1928(昭和3)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,168 字 · 71 页

青空文庫

ナースチャは、アンナ・リヴォーヴナを信用はしなかった。同時に、組合も全部信用出来ない心持になって来たのであった。陰気な眼付をして、ナースチャはテーブルの上の紙を眺めた。

「心配おしでない、いいようにして上げるから」

アンナ・リヴォーヴナは、しょげたナースチャの肩を押し出してやりながら云った。

十一

「どうした? ナースチャ」

リザ・セミョンノヴナが舶来の、十五ルーブリ出して買った絹靴下の穴をつくろいながらきいた。

「組合のこと」

両手を腰にかって立ち、リザ・セミョンノヴナの手許を見下していたナースチャは、隣の食堂へ目まぜして、小さい声を出せと合図した。

「行きました。この間」

「すんだの」

「アンナ・リヴォーヴナがまだ書付を書いてくれないんです」

リザ・セミョンノヴナはちょっとだまりこんだのち、云った。

「なんとか云われたら、こうお云い。じゃなぜパーヴェル・パヴロヴィッチは自分の組合へ入っているんですかって――いい?」

ナースチャはつよく合点合点した。

けれども、ナースチャの本心はもうかわっているのであった。アンナ・リヴォーヴナにほのめかされた疑いが彼女の頭からのかなかった。