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あかいへや
赤い部屋
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,114 字 · 36 页
そこで私はその子供にこう声をかけました。
「おい坊っちゃん。その針金へ小便をかけて御覧。とどくかい」
すると子供は、
「なあに訳ないや、見てて御覧」
そういったかと思うと、姿勢を換えて、いきなり針金の地の現れた部分を目がけて小便をしかけました。そして、それが針金に届くか届かないに、恐ろしいものではありませんか、子供はビョンと一つ踊る様に跳上ったかと思うと、そこへバッタリ倒れて了いました。あとで聞けば、避雷針にこんな強い電流が流れるのは非常に珍らしいことなのだ相ですが、か様にして、私は生れて始めて、人間の感電して死ぬ所を見た訳です。
この場合も無論、私は少しだって疑いを受ける心配はありませんでした。ただ子供の死骸に取縋って泣入っている母親に鄭重な悔みの言葉を残して、その場を立去りさえすればよいのでした。
これもある夏のことでした。私はこの男を一つ犠牲にしてやろうと目ざしていたある友人、と云っても決してその男に恨みがあった訳ではなく、長年の間無二の親友としてつき合っていた程の友達なのですが、私には却って、そういう仲のいい友達などを、何にも云わないで、ニコニコしながら、アッという間に死骸にして見たいという異常な望みがあったのです。