轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あかいらくだ
赤い駱駝
梅崎 春生
「世界」1948(昭和23)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,820 字 · 24 页
その感じが途方もなく拡がってゆくもんだから、おれ自身がそれについてふくれ上ってゆくのに、足もとのふらつくような不安な感じが、突然おれをしめつけてきた。そして軍隊ですごした一年余の歳月が、おそろしく長い時間としておれに感じられてきた。そんな風な沈黙が、一分間もつづいた。そうしておれの横にいたあのちょび鬚を立てた特務中尉の声で、
「そうすると、敗けたというんか。ええ。この日本がよ」
通信士が下手くそな字の電報写しを、ふわりと卓に投げてよこした。その横を、洞窟の壁に身体をすらせながら、二見が士官室をでて行くところだった。両手を正しく振ったいつもの歩き方だった。しかし唇をいつもよりぎゅっと固く噛んで、何だか歪んだような表情に見えたが、バタバタという跫足をのこして、二見はだまって室を出て行った。あいつの歩き方はただひとつの型しかないので、表情というものが全然ないんだ。だから後姿をみると、まるで二見が平気であるいているように見えた。
「へっ。あたり前みたいな面してやがる」
その後姿をみながら、掌気象長か誰かが、はきだすように呟いた。そしてばらばらとそれに誘われるように立ち上るのもいたし、卓に倚ってじっと眼を閉じているのもいた。