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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

02 駈込み訴え

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,864 字 · 44 页

青空文庫

子供たちはまた容貌いかめしい髯だらけの去定に怖れたようで、幼ない三人は固く身を寄せあったまま、満足には返辞もできなかった。

「大丈夫だ、心配するな」と去定は怒っているような声で云った、「おっ母さんはすぐに帰って来る、姉さんの病気もすぐに治る、え、おまえたち、大きくなったらなんになる」

気分をほぐすために云ったらしいが、唐突でもあるしまのぬけた質問である。子供たちは口をつぐんだまま去定を眺めており、去定はその問いのまぬけさかげんに自分ではらを立てたのだろう、心配するなおっ母さんはすぐに帰るぞと云って、顔を赤くしながら立ちあがった。

竹造を養生所へ帰らせた去定は、登を伴れて伝通院の前まで歩き、そこで辻駕籠をひろって、小伝馬町へゆけと命じた。いそげ、とどなったので、駕籠屋の一人がとびあがりそうになったのを、登は見た。

「なにを始めるんだ」と駕籠の中で登はつぶやいた、「いったいどうするつもりなんだ」

小伝馬町の牢屋へ着くと、去定は奉行に面会を求めた。ここでもよく知られているようすで、取次の者も極めて鄭重だったし、奉行の島田氏は登城しているからといって、代りに出迎えた岡野という同心の態度も慇懃であった。