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せきようかんじけんのしんそう

赤耀館事件の真相

海野 十三

「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页

青空文庫

「ちがう。ちがうよ。奴は死んだか、どうだか、一寸調べてくれないか」

「た、短刀を、おしまい下さい。た、短刀を……」

「なに、短刀を……」兄はやっと気がついたものと見えて、自分の手に堅く握られた短刀を発見すると声をあげてそれを床の上になげ落しました。

勝見は、恐る恐る笛吹川画伯の身体にふれて見ました。生温い体温を掌に感じて、いやな気持になりました。息は止っています。手首をとりあげて見ましたが、脈はありません。身体をひっくりかえしてみましたが、別に短刀で突いた傷のある様子もありません。くいしばった唇から、糸を引いたように赤い血が流れていました。両眼はつるし上って、気味のわるい白眼を剥いていました。多分瞳孔も開いていたことだったでしょう。体温はすこし下って来たような気がします。

「駄目らしいようでございます。息も脈もないようでございます」

「脈も無い――大変なことになっちまった」

「医者を呼びましょうか」

「ウン、呼びにやって呉れ」兄は眼を閉じたまま、そう言いました。

「警察の方は、届けたもんでございましょうか」

「なに警察! 届けないといけないだろうか」

「兎も角も、医者が参った上での相談にいたしましょうか」